GSJのジオサロンin東京に参加しました。
昨日(10月13日)の夜、東京日本橋の会場で行われた産総研地質調査所(GSJ)企画によるジオサロンin東京(サイエンスカフェ)に参加しました。内容は、すでに何度も紹介している高橋雅紀さんによる日本海溝移動説のお話です。
サイエンスカフェとは、科学の専門家と一般の人々が、カフェなどの比較的小規模な場所でコーヒーを飲みながら、気軽に語り合うという試みで、一般市民と科学者、研究者を繁ぎ、科学の社会的な理解を深める新しいコミュニケーションとして注目されている活動(日本学術会議のページから抜き書き)です。一般向けの講演会やシンポジウムよりざっくばらんですがより身近に話を聞ける機会ですし、素朴な質問にも答えてもらえる場所といえます。JST(日本科学技術研究機構)のページで開催予定などを探すこともできます。
私自身の経験ではヒッグス粒子が発見されたときにKEK(素粒子研究機構)の方や、去年重力波が発見されたときに宇宙論の研究者のサイエンスカフェに出たことがあります。しかし、地質学者がサイエンスカフェをやるのはほとんど珍しいと思います。地学関係では、時たま地震や火山の噴火予知に関するものがあるかもしれませんが、多いのは数学や物理学(宇宙論)といった難解な話か、自然探検(ネイチャー)関係の憧れ的な興味をもつ人向けだと思います。
今回のお話は、7月、8月テレビで放送となったNHKスペシャル「ジオジャパン第2集」とブラタモリ「秩父・長瀞」にまつわる内容でした。ちょうど学校でもこれらを教材にして「日本列島の生い立ち」の単元に生かせたと思っていた(反省点もあります)ところでした。新しいネタも聞けるかと思っていましたが、私のような準専門家にとってはすでに伺っていることがほとんどでした。もちろん、相変わらず巧みに作られているプレート運動に関するアニメーション動画やテロップ付きの見事なスライドによる解説は分かりやすく、だれもまねできないレベルでしたし、テレビ取材の裏話や、アナログ模型での研究の苦労について興味深い話でみなさんを満足させてくださいました。
特に、おっしゃっていたことで印象的なのは、地質学がいかに複雑な自然の姿を相手にしているか、とそのために100人地質学者がいれば100通りの解釈がある、というたとえですが、科学ではないというそしりを受ける面もふくめて、それが地質学の面白さだということ。また、今やコンピューターでプレート運動はシミュレーションできるのだが、実はバーチャルな再現はまゆつばで、アナログ模型でなければ発見できない(これがサイエンスである)ということを強調されていました。例のアナログ模型(→こちら)を全員が実際にその場でつくるコーナーもありました。
それから、地質研究を通じてわかるのは、人の認識というものが、それぞれ異なっているということ。誰もがもっとも関心のあるものに目を向け解釈し記憶する。現実(世界観)というのはみなそれぞれ違い、研究にもそれが反映される。という話がありました。これは、養老孟司センセイもよく言っていることで、だんだん哲学になるのだろうと推察しました。
高橋さんには10年くらい前からお世話になっていますが、最初にお話を伺って以来、とにかく地質現象(露頭観察)をプレート運動に結び付けて考えるロマンのとりこにさせていただきました。このロマンが今後も世の中に広まっていくように微力ながら応援したいと思います。