大栗博司「探究する精神 職業としての基礎科学」(幻冬舎新書)

実は,Amazonで予約していて昨日発売され届いたばかりで,まだ全部読んでいないのですが,大栗さんの一般向けの本はいままで全部読んでいるので,ぱらぱらとめくって紹介しても構わないと思います。素晴らしい内容であることに間違いありません。

はじめに,を読んでなんと一昨年暮れにガンが見つかった(その後手術で回復された)ときに来日されて,東大の安田講堂で「宇宙の数学」と題した講演をされた,と書いてあって,私も聞いていたことを思い出してうれしくなりました。ぱらぱらとめくると大学から研究に至る経緯とともに,「世界の動きに乗り遅れている日本」などという見出しが飛び込んできて,いかに基礎科学に力を入れるべきかというテーマが説得力をもって語られているのが伝わってきます。知ることが精神の最大の欲求であり喜びであることを多くの人に伝えることが,晩年を向かえた大栗さんの思いなのだと想像します。今年たまたま,中1に天文分野を教えることになりましたが,ぜひこの本の紹介からはじめてみようと思いました。

私自身も晩節を向かえて(定年と言うこと)気兼ねなくやりたい勉強をつづけるのが楽しくてしかたありません。ちょうど10年ほど前に大栗さんの前のIPMU(東大数学物理宇宙研究機構)機構長の村山さんの講演を聴いて以来目が開かれたのでした。相対論や超弦理論にすこし挑戦してみましたが,歯が立たないものの,古代史や天文現象を結びつける研究でもしてみようと考えているこの頃です。プロアマ問わず,知的な活動を自由にできる世の中をつくることが本当に大切だと,確信する勇気がわいてくる本だと思います。