高津からの星空2

近くにある「大山街道ふるさと館」のミニ市民ギャラリーで,天体写真を展示してもらう2回目。昨日から2月15日まで。どんな撮影方法なのか簡単に説明したりしています。東急田園都市線高津駅から徒歩6分。お近くにおいででしたらお立ち寄りください。

撮影風景
昨年の月食と惑星写真

デジタル時代の天体写真撮影

 ‘90年代のおわりに,デジタルカメラが登場しはじめた頃,デジタルの画素数ではフィルム(銀塩)の解像度にはとても及ばない,と言われていましたが,あっという間に数百万画素のセンサーが登場し,暗箱であったカメラから動画も撮れる電子機器へと進化し,今は誰もがスマホで使うような日常的なものなっています。フィルム時代には,撮ったフィルムを現像してプリントしてもらう必要がありました。天体写真では,ひと晩撮影して,現像に出してもどってくると,カメラの設定が間違っていて露出時間が足りず,フィルムに何にも写っていなかった,などという失敗がよくありました。デジタルでは,その場で撮って確かめられるので,そのような失敗もなく,なにより現像代がかからないので,失敗を繰り返しても無駄な出費をしなくて済みます。

天体望遠鏡もデジタル化が進んでいます。昔は,望遠鏡の操作にはある程度の習熟が必要でしたが,今はPCで制御するので,スマホのアプリで目的の天体を導入し追尾するのも自動です。撮った写真データも,パソコンでの処理によって暗い画像を明るくしたり,像を鮮明にしたりなどの加工をする画像処理が普通になりました。はじめの頃は,このような処理を加えることに(なにか改竄しているような)抵抗がありましたが,暗い天体の光を電子的に蓄積する(露出時間を長くするよりも多数枚撮影して合成する「コンポジット」という)手法や,惑星などの撮影には大気の揺らぎをキャンセルして像を鮮明にする「ウェーブレット」技術など,宇宙からのデジタル情報をまさに目に見えるように現像する方法として普通に受け入れられています。デジタルカメラのセンサーも高感度のものがどんどん低価格になって天文マニアの間では天体専用のCMOSカメラが普及しています(天体写真ではカメラの機構がシンプルなので価格は入門用で3万円程度です)。

さらに,ここ数年,都会の空でも天体写真を撮ることができる,「光害カットフィルター」に新しいタイプのものが登場しています。専門的になりますが,ナローバンドパスフィルターといって,天体特有の波長の光だけを通しLED照明のような夜空を明るくしている光をほとんど通さないので,淡く光る散光星雲などが都会ひどい光害の中でも撮影できるようになりました。これらを使って,CMOSセンサーの画像をその場でコンポジットしてPCやタブレットで「電子観望」することにも注目が集まっています。このように,デジタルの力で手軽で安くできるようになった天体観察や写真撮影です。私もやってみようと言う方があらわれることを楽しみにしています。