最近の撮影機材とあれこれ

望遠鏡の直焦点による天体写真撮影には,精度の良い赤道儀が必要なのですが,2015年にSkyWatcher社製のEQ5GOTO,という廉価な自動導入赤道儀と出会い,以来オートガイダーによる直焦点撮影にはまってしまいました。EQ5はビクセンのGP赤道儀をベースにしているのですが,SynScanというモーターコントローラーが付いて,これまたポケットマネーで買えるようなオートガイドカメラおよび,フリーのガイディングソフト(PHD2)を使えばだれでも安上がりに直焦点撮影が楽しめると思います。とはいえ,載せられる望遠鏡の重量には限界があり,20㎝クラスでディープスカイ天体を撮影するには無理がありました。EQ6というEQ5の先輩格の赤道儀もあるのですが,本体の重量が2.5倍くらいになって年寄りには扱いずらいとおもっていたところ,iOptronというメーカーから,耐荷重量の大きいのGEM28という製品が出て,重量も価格的にも申し分ないので,これを機会に購入しました。機材を買い足すことをこの業界では,「軍拡」と呼んでいます。こう書くと,どんどん機材が増えていきそうですが,今はヤフオクという便利なリサイクルシステムがあるので,ものが余分に増えることはなくなりました。最近このブログの天体写真を見てくださり,参考にしたいという方もいらっしゃったので,ここで,最近の撮影機材や今までの経験(撮影方法)について改めてまとめてみようと思います。

[追記](2022年7月6日)→今年1月から,半年でさらに機材を改めました。GEM28赤道儀を購入した目的には耐荷重量が12㎏もあるので,自宅で惑星撮影に使っていたEdgeH800(20㎝シュミカセ)をディープスカイ撮影にも使おうと考えていました。ガイドもオフアキシス(主鏡の焦点の像の一部をプリズムでガイド鏡に導く)ガイドにし,3月,4月と遠征でテストしました。ところが,予想以上に星像が悪いことに改めて気が付きました。シュミカセ購入の際,星像が今一だったのでメーカー(販売店)に交換を要求したくらいでしたから,結局は外れ個体だったのかと思っています。思い切って,ヤフオクに出し代わりにSkywatcherのBKP200(20㎝ニュートン反射F5)を購入しました。鏡筒重量が約10㎏ですが,風がなければガイドもまずまずOKでしたし,星像はシャープで満足しています。はじめはリッチークレアチンカセグレンを考えたのですが,光軸修正が難しそうなのと価格が半分以下なのでニュートンにしました。また,長年使いこんだペンタックスの75EDHFですが,これも星像が割れるのが気になっていたので,名残惜しい部分もありましたが,ヤフオクに出し(レデューサーはいい値が付きました),AscerのFMA400を発注しました。夏過ぎに入荷予定だそうで,秋からはFMAとAscerASL200で主に散光星雲を,来年の春にはBKP200で銀河を中心に撮れたらいいなと思っています。BKP200の搬出は結構大変です。BKP130はちょっと出番がなくなりそうですが,自宅で月などをとるような使い方もできると思っています。(追記おわり)

 遠征する場合,赤道儀は,10年以上前から持っていたVixsenのGP赤道儀をSynscanで動かすように改造したものと,GEM28の2台体制です。鏡筒は,SkyWatcher のBKP130にコマコレクターを付けたもの(口径13㎝焦点距離588㎜)と,30年前のPentax75EDHF(口径75㎜fl500㎜)にレデューサーを付けてF4.5にしたもの,それと昨年購入した,AscerACL200(口径5㎝ fl200㎜)。GEM28 にBKPを載せ,GPではACL200と75EDHFを乗せて, なるべく多く撮影できるように効率化(トラブルがある両方撃沈することもありますが)を図っています。

iOptronGEM28赤道儀,低価格な割に搭載重量が大きく期待しているところです。

 2台体制になったのは,カメラを冷却CMOS2台にしたのがきっかけです。それまでデジカメCanonEOSkissX5,まあ,10万円ちょっとならと,冷却CMOS(ZWOのASI533センサーサイズ1インチ)を購入して,デジイチとは全然違うことに気づき,一昨年の11月のブラックフライデーセールにASI2600MC(センサーAPS-Cサイズ)をも買ってしまったのというわけです。ASI533とBKP130 の相性はとても良く,タカハシのε130(むろんこちらの方が高性能です)より,焦点距離が長いので中ぐらいの大きさの銀河などにも向いています。また,ACL200とASI2600も良い組み合わせだと(実は友人に勧められた)思います。望遠鏡とカメラの制御には,ASIAIR-Proを2台使っています。オートガイドや自動導入赤道儀を動かすにはパソコンが必要で,それをラズベリーパイにまとめたギアがASIAIRです。昨年は2台ともWi-Fiで運用する(つなげる)のにうまくいかなかったりしましたが,GEM28 はケーブル接続で問題なくつながります。極軸合わせですが,EQ5を使い始めたころ,2スターアライメントでの極軸合わせがうまくいかず(地平線近くの星が山や木立で見えないとか),QHYのPolemasterを使うようになったのですが,最近はオートガイドなので極軸望遠鏡で十分だなと考えています。40分ずれの円と北極星の時角(スマホのアプリで調べ)で合わせています。iOptronの極軸望遠鏡には暗視野照明が付いていて,コントローラーに北極星の時角が示されるようになっています。
 オートガイドは,一番初めにスタンドアロンのSynガイダーというのを使いました。カメラも付いていて,しかし感度が低く,2等星か3等星をガイドマウントで導入(そういう時代があった)しなければならず,ガイド鏡にファインダーを付けて導入したり苦労しました。その後,ステラショットでガイドするようになりましたが,アストロアーツのSNの星図の勾玉星雲の輪郭に騙されたりしつつ,オートガイドソフトはやはりPHD2が優れていることを知り,APTも使いましたが,ASIAIRがProになったときに切り替えました。ただ,ASIAIRで接続マウントの選択が「SynScan」ではなく「SynScan-beta」でなければならないことに半年間気づかず,全然使えないことにイライラさせられました。ASIAIRとコントローラーの接続はその後,Wi-Fiアダプターを介して「EQMod-withSkySafari」モードで接続しています。撮影天体の導入には,これもはじめはステラショットのような星図が必要かと思いましたが,ASIAIRのプレートソルビング(数秒の撮影データから恒星の位置を割り出し,修正する機能)だけで十分だということに気づきました。ASIAIRには,写真で分かるように中継ルーターを付けてWi-Fiがよく飛ぶようにしています(新しいのはアンテナが付きましが)。
 ASIAIRの難点は,ZWOのカメラしか使えないとか,Autorunの設定で,露出時間や枚数が細かく決められない(1分,3分,5分,10分とか)ところかなと思います。CMOSのオフセットなども設定できませんが,ZWOに迎合すれば実用上うまくいく感じです。また,コントロールするためのスマホやタブレットにあまり安物を使うと,うまくいかないことを経験しました。ASIAIR本体だけでも3万以上するのに,さらにiPadなどを新調するのも,と思い,中国製の安いタブレットを使い始めたのですが,ASIAIRアプリは結構重いようで,何度か普段使いのスマホで代替せざるをえなかったりしています。スマホですと画面が小さくピント合わせの時に困ってくるのですが,今回暮れに(軍拡だらけ)やはりZWOのEAF(電動フォーカサー)も買ってしまったので,ピント合わせは何とかなりそうです。
 ガイド鏡は,3センチfl120㎜のもので,ガイドカメラは,ZWOのものでないとASIAIRが使えないので,それまでのQHYのものが1個余っています。ZWOASI120miniを買い足し,それまで惑星撮影に使っていたASI224をガイドカメラに回しました。それで,惑星撮影(セレストロンHD800 20㎝シュミカセで自宅でする)にPlayeroneのMars-Cを買い足しました。で,流星撮影用にNeputune-Cも買っています(こうやって散財がとまらない)。
 そして,遠征では問題になるのがバッテリーですが,はじめは鉛蓄電池のものから中国製のリチウムイオンのも(500Wh)が一つへたってきたみたいで,買い替えた400Whクラスのものを2台持っていきます。パソコンを使わないので,また最近は結露除けヒーターもあまり使っていない(段ボールフードでたいていしのげる)ので一晩の撮影でちょうどもつ感じです。
 関東地方在住で,良く晴れるのは冬ですが12月~1月,2月は寒さ対策も撮影ノウハウのうちかもしれません。最近5Vのモバイルバッテリーで使う電熱チョッキをAmazonでぽちってしまったのですが,全然だめですね(あっという間にバッテリーがなくなります)。ホッカイロなどのほうが実用的だと思います。また,あったかインナーもつい最近グンゼのホットマジックを使い始めましたが,かなりいいと思っています。とにかく,重ね着(ダウンの)とカイロでしのいでいる感じですが(防寒着もそろえようとすると金額はバカにならないですね)。
 遠征場所ですが,八ヶ岳方面,富士山(山梨)方面が定番でしたが,去年8月に台風一過でようやく晴れた時,SCWの予報を見て北茨城の国道349号線沿いに行ってみたところ,見晴らしのよさが気に入っています。八ヶ岳や富士山も風光明媚と言えば言えますが,なにしろフォッサマグナ大地溝帯ですから,要するに険しい山間部だからこそ人里まれで星見に適しているのですが,北茨城の阿武隈山地は,なだらかです。なんか,古い昔の日本の風景を見ているようなところで,つい先月にも,晴れそうなので出かけてしまいました。ただし,東京西部からですと首都高の高速代も往復プラスされるので,高速代が9000円近くかかるのが難点といえば難点でしょうか。
 自分では楽しんでやっていることですし,金額的にもっとすごい機材を導入されている方も多くいるのでつつましくやっているつもりですが,月に1度くらいのペースで出かけたり,やたらに宅配便で荷物が届いたりすることで,家人に気兼ねすることも多くあることを付け加えて,趣味の一端の紹介とさせていただきます。