今年の夏

 地球温暖化をこれほど実感したことはなかった気がする夏でした。9月中旬過ぎまで猛暑日が続いて,やっと9月19日の最高気温が,25℃くらいで一息つけたところです。もちろん一昨年あたりから,もう季節観が変わって6月から9月~10月が夏で,春や秋がどんどん短くなってくる印象でしたが,今年ほど太平洋高気圧の勢力が強く(6月中旬に梅雨明けのような状態)長続きしたのははじめてだったと思います。ゲリラ豪雨が身近に感じられた(9月11日の世田谷や川崎北部)のもあります。気候変動のリスクを実感していると言えば良いでしょうか。


 大学で気候学を専攻したものとして,「地球温暖化」は,ある意味「騒動」と言ってもよく,冷静に考える必要があると思っています。過去の歴史をみれば,人類にとって脅威なのは「寒冷化」なのです。たとえ人間活動が地球環境に影響を与えるとしても,結果がどうなるかは現在の科学では予測不能であり(IPCCは予測と言っているが),極端な寒冷化をもたらさない限り(ある程度の気候変動は人類は経験済みなのであって)適応可能であるというべきです。新聞記事で読んだのですが,国内の海水浴客のピークは1985年の約3800万人で,2022年には360万人と1/10に減少,海離れが進んでいるというのです。昭和のあの芋洗いのような海水浴の姿が消えているというわけで,確かに最近の夏の海岸の景色に「海の家」が消えていることに気づきます(参考→ここに鎌倉の由比ヶ浜の写真があります)。1980年代といえばようやくエアコン(当時はクーラーと言った)が普及し始める時期で,90年代でも山手線の車両にエアコンがあるのは先頭車両と最後尾だけだったのを覚えています。夏の電力需要の逼迫に対して,冷蔵庫やエアコンの省エネ化が進んだのが2000年代後半でした。さらに電灯のLED化もすすんで,東日本大震災後の計画停電とか,何だったかと思うようになりました。つまり,暑い夏を昔は海水浴でしのいでいたのが,夏はエアコンの効いた室内で過ごすことに代ったのではないでしょうか。地球温暖化とエネルギー問題はセットで考えるべきものですが,危険な暑さですから外出は控えてくださいと言われ,電気を惜しみなく使ってなんとはなしに適応しているのが人類というものではないかと思われます。日本の夏の屋外作業で普及している空調付きベスト,は海外では救命胴衣のように見えて奇異の目ですが注目されているようです。屋内の職場なら真夏日だろうと猛暑日だろうとエアコンでしのぐしかありません。もうリタイアしているので,家のエアコンを使うと電気代がかさむのを気にしながらこの夏を過ごしましたが,来年もその先もこれが続くと腹をくくりました。

近況をつづけると,天体写真撮影では機材を新しくしました。タカハシのEM200赤道儀がヤフオクで10万円台で出ていたので何気なく入札したら,そのまま落札者になってしまい,手に入れたのですが古いタイプでしたのでSS-Oneという会社に自動導入できるように改造してもらい,またピラーもヤフオクで手に入れて庭に設置しました。それほど使い勝手が良いわけではありませんが,20cmクラスの反射望遠鏡の架台としてバランスが良く安定して撮影できると思います。以下,この夏の庭撮りした写真です。

HαとOⅢという波長の光を選択的に透過するワンショットナローバンドフィルター(SV220)で撮影すると,星雲はこんな感じで写せます。ただ,星の光量が不足してしまうので,遠征して撮影したデータと合わせてコンポジットしたのが次の画像です。

OⅢという波長は緑色ですが,自然な色合いになり,星がきちんと出ています。ギャラリーにはこの写真を載せています。

この星雲も遠征した時のものがありますが,露出時間が今までで最長ですのでギャラリーに入れてあります。
 この夏,庭での撮影は夜でも27℃とかで暑かったです。Tシャツに短パンだと蚊に刺されるので,ズボンに長袖ですと汗ばんでくるのです。その後しばらく晴れていても撮影する気が起こらなくなりました。

はくちょう座の銀河NGC6946,9月17日20h51m~
BKP200,ASI533MCP,DTDフィルター,5分31枚(2時間35分)トリミング

というわけで,上は夏の終わりの一枚となります。天の川の中に位置しているので赤みがかっているようです。8月には何をしたかというと,所属する天文同好会の彗星(紫金山アトラス彗星)写真展があり,お盆の時期には若狭から丹後半島をまわる旅行にでかけ,22日から同じく天文同好会の夏合宿で南会津に行きました。3年ぶりの皆既月食も良く晴れて眺めることができました。とにかく暑い夏でしたが,印象に残ることも多かったと思います。9月11日には朝方家の目の前にきれいな虹が出ました。この日の午後,川崎の中原区や高津区,東京の世田谷区で1時間に100mmを超える雨が降って冠水被害がでました。雨が降ればすこしは過ごしやすいだろうとずっとレーダーを見ていたのですが,多摩市のあたりだけ雨雲が避けて行く感じでした。旅行ではたくさんの神社にお参りしたので,神様がご褒美に虹を見せて我が家を守ってくれたのだと思うことにしました。

明け方に現れた虹。皆既月食の3日後の月が虹と重なっている。