重力波の本
先日、IPMUの講演会で重力波のお話をされた川村静児さんの書かれた「重力波とは何か」幻冬舎新書を早速購入してみました。また、9月に慶應義塾高校の講演会で話された新貝寿明さんの「ブラックホール・膨張宇宙・重力波」光文社新書もおすすめの本に追加したいと思います。
重力波の検出とブラックホールの合体を同時に明らかにしたアメリカのLIGOの観測は今年のノーベル物理学賞に輝きました。初検出は一昨年で発表は去年だったわけで、アインシュタインの100年の宿題に答えたとか、新しい天文学のはじまりなどと話題になりました。昨年の発表では、地球から13億光年先にあった地球の36倍と29倍の質量をもつブラックホール同士が回転しながら合体するときに放たれた重力波を観測し、今年8月には地球から1.3億後年の距離にある銀河付近の中性子星同士の合体が観測されたのでした。
重力波が今まで観測できなかったのは、それがあまりに小さな空間のゆがみ(原子の大きさくらい)なためですが、長さが4㎞もあるレーザー干渉計とそのデータ解析(雑振動の除去)技術の進歩によってようやく観測できたわけです。この発見は、ブラックホールが直接観測できただけでなく、宇宙の始まりにさかのぼる謎の解明につながる新しい宇宙望遠鏡の登場をも意味しています。川村さんは、これらの観測装置の開発に携わった経験からLIGOの快挙をものすごく喜んでいらっしゃいました。今後、日本の岐阜県神岡に建設されている重力波望遠鏡KAGRAの本格稼働(2年後)に期待が持たれるところです。
今年8月の中性子星の合体では、今まで謎とされていたガンマー線バーストを衛星で観測し、光学望遠鏡(日本のスバル)でも合体に伴う超新星爆発を同時に観測して、これも謎とされていた重元素の生成過程の解明に近づくなど大きな発見が相次ぎました。そして、今後は宇宙誕生にインフレーションがあったことの実証や、余剰次元の実在を証明するかに期待がかかっています。また、ダークマターやダークエネルギーの正体が見つかるかもしれません。新貝さんの本では、今回のノーベル賞を受賞した一人キップ・ソーンが監修した映画「インターステラー」も紹介されています。こういった発見がSF映画にも反映されているのは興味深く、ワームホールなど時空の解釈についても研究が進むような気がします。
私自身、現代物理学や宇宙論の専門書を読み解く能力はありませんが、こういった新書を何冊も読むことでなんとなく徐々に理解出来るようにりました。川村さんと同期だという松原隆彦さんの本「目に見える世界は幻想か」光文社新書などもおすすめです。