Kavri IPMU一般講演会「起源への問い」に行きました
年に数回あるKavri IPMU(東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構)の講演会にはできる限り参加申し込みをしています。抽選で外れることもありますが,どういうわけか今回は講演当日3日前に当選の通知メールが来ました。IPMUと東工大学地球生命研究所との合同で,場所は大岡山と近くで楽でした。内容は,①IPMUから杉山直「宇宙の始まりに迫る」,②東工大から井田茂「地球外生命」③同じく東工大から伊藤亜紗「かたちが生まれるとき」と④鼎談「起源を問うとはどういうことか」というラインナップ。
①はこういった講演会に通うようになったはじめての時に,演者だった杉山さんなので,残念ながらあまり新しいお話はありませんでした。②の井田先生は久々に面白いお話を伺いました。数年前に川崎青少年科学館での講演会で聞いたことがありますが、そのときより、俄然状況が進歩したという話でした。
最近の、宇宙関係の発見は,理論物理では去年の重力波につきます。それに劣らないくらい目覚ましい発見があった系外惑星(2016年にケンタウルス座プロキシマと2017年のトラピスト1)がこの講演会のメインと言えます。井田先生は系外惑星に関する日本のリーダーと言って間違いありません。1995年以来の発見ラッシュとその経緯よりも今回は一歩進んでそもそも太陽系が一般的とは言えなくなった状況の説明(銀河系には7割もの赤色矮星)やあらためて地球という惑星の特性,ならびに生命とは何かという議論が再検討されはじめたことを伝えてくだり,とても刺激的な内容でした。
特に印象に残ったのは,そもそも異形の惑星と呼ばれた系外惑星の最初の発見が,常識外れだったがために,まさかそんな観測データはあり得ない,と思われてノイズとして処理されていたものの再発見だったということ。そして,同様に今後,地球外生命の探索でも地球を基準とした生命の痕跡を想定しても,取り逃がす可能性がある,つまりその環境(想定外)に見合った生命のありようを模索することが必要になっている,という話でした。30m望遠鏡やスターショット計画など,あと数十年後にはどうなっているのか,これからもわくわくドキドキの宇宙科学を再確認した1日でした。昨年末に出ていた井田先生の新しい本をAmazonで注文しました。