黒瀬川構造帯にふれる
2015年の11月11日に五日市(東京都あきる野市)で行われた,「本邦地質学の難問,黒瀬川帯の謎に迫る」というテーマの地質見学会(東京都地質調査事業協会主催)に参加したときの巡検レポートを記します。
地質学で黒瀬川構造帯といえば,謎の地質帯として知られています。四国愛媛県にある黒瀬川の周辺に分布する地層につけられた名前で,長瀞で有名な三波川変成帯の太平洋側に中央構造線と平行して同じく帯状に分布する秩父帯。その中ほどに,さらに細いベルト状に九州四国から紀伊半島,中部地方をへて関東山地にまで出現するものです。ただし,首都圏に近い五日市でも露頭が見られると言うことは,この巡検の案内で始めて知りました。謎というのは,三波川や秩父帯よりも古い年代(古生代シルル紀)を示す岩石が含まれるほか,蛇紋岩という地下深くから上昇してくるとような特殊な岩石が狭い範囲にみられ,その成因について,当初から地質学者を悩ませつづけてきたものなのです。
案内してくださる講師は,幾度もお世話になっている産総研の高橋雅紀さんであることも,話せば長くなりますが,参加した理由です。
Stop1は秩父帯に含まれるペルム紀の石灰岩を採掘する工場付近。付加体であること
が玄武岩の枕状溶岩とセットで見られることからわかります。
←Stop2 Stop1の近くにある蛇紋岩の露頭。黒瀬川構造帯の特徴を示します。
秋川沿いの新生代の泥岩層では,すでに層理が垂直になっています。丹沢や伊豆弧の衝突に伴う変形と考えられます。
とにかく,日本列島がまだ大陸縁だった時代の地質の成り立ちに関わるさまざまな地層を一同に見られることが信じられませんでした。
Stop3で三畳紀の示準化石であるモノチス(二枚貝)の産出地。化石の実際のサンプルを見せてもらいました。
Stop5 こちらは四国の佐川が模式地とされる鳥の巣石灰岩(ジュラ紀)の露頭 ハンマーでたたき割ると石油臭がすることを確認しました。こういう体験をすると,興味がさらに深まります。
Stop9 最後は,新生代の日本海拡大時に伸張変形をうけて生じたと考えられる地滑りによる不淘汰角礫岩層,ここでは,高橋さんのプレートによる列島形成史が披露され,非常に深い話におよびました。