本「宇宙の始まり、そして終わり」
現在、宇宙の観測で一大成果を上げた内容について、研究者自らが解説してくれるとても説得力のある本です。小松英一郎さんは,2001年に打ち上げられ,WMAP衛星の観測データの解析をになった唯一の日本人研究者です。
この映像が,その精密な宇宙背景放射に見られる10万分の1のゆらぎを示したもので、いまでは地学の教科書にも必ず掲載されるようになっています。21世紀になって宇宙論や宇宙に関する研究が飛躍的に進むもとになった観測がこのWMAPといっても間違いではないと思います。
その成果を簡単にまとめると、①宇宙の正確な年齢が137~138億年前であること。②ビッグバンの前にインフレーションという急激な膨張があったという理論がほぼ間違いないこと(宇宙の等方性)。③宇宙の曲率が、ほぼ平坦であり、その全体の質量から宇宙はダークマターとダークエネルギーという未知のものが96%もしめていること。など,たくさんの画期的な発見をもたらしました。このことについて,当の小松さんにインタビューしつつ解説した本ですので、とてもビビットにその成果が伝わってきます。
宇宙背景放射に関しては、後継のプランク衛星による詳しい観測や、今年のノーベル賞の重力波なども含め、今後,背景放射からのBモード偏光が観測されれば,原始重力波の発見ということになり,日本人に2つくらいノーベル賞が出るかもしれません。現代天文学の発展に興味がある方の入門書としてとてもやさしく書かれていておすすめです。