アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた~ガチンコ相対性理論 講談社ブルーバックス 深川俊太郎著

講談社ブルーバックスは,「科学をあなたのポケットに」というキャッチコピーで有名な新書シリーズです。私は高校生の頃から都築卓司の「四次元の世界」などでずっと今までお世話になっています。ざっとですが今までに100冊以上は買っていると思います。この本も今年の5月に出たもので,書店で見て迷わず買って,忘れていたのですが,夏休みに入って先週思い出し,読み通してみました。 

著者の深川俊太郎はペンネームで,本名は岡田仁志という編集者の方で,物理や数学は苦手な文系(文学部出身)。それが,編集者として村山斉先生の「宇宙は何でできているか」や大栗博司先生の「超弦理論入門」(ブルーバックス)にかかわった縁で,単なる〈優しくわかる○○入門〉という啓蒙書でなく数式で一般相対性理論のアインシュタイン方程式を理解できるようになりたいと考え,自らの実体験としてその勉強の過程を書いた文字どおりのガチンコドキュメントです。ずっと昔から科学においてはこのようなジレンマ(知っておくべき教養だが,最先端の科学理論は素人には普通理解できない)があり,あまたの啓蒙書(ブルーバックスのような)が書かれています。

宇宙論に関する啓蒙書の数々

 読み始めて,これはこの人の体験であり,読む側は分からずじまいだなと思いましたが,6年かけて勉強した(KEKの研究者に手ほどきを受けたとは言え)というのですから間違いなく分かったのだと思います(特殊相対論のローレンツ変換くらいまでは高校生ぐらいでも理解できる)。一応理系である私も,昔から同じ思いで過ごしていますから,とても共感しました。実は,3年前に小林晋平先生の「ブラックホールと時空の方程式~15歳からの一般相対性理論」を読み始めたときは,これで相対論がわかるとおもったのですが,本の真ん中ぐらいから,例のアインシュタインの縮約をつかったテンソルのあたりでリタイアせざるを得なくなるのです(30年前の長沼伸一郎さんの本でも同じでした)。

 で,やはり勉強には時間がかかるのです,と同時に続けていくと他の分野にもつながりが出てきて,少しずつですが,分かってくるもので,この「少しずつわかる」に気づくまでに結構時間がかかる気がします(頭のいい人はすぐわかるのでしょうが)。

 というわけで,とても勇気づけられて,わたしももう一度挑戦することにしました。一応大学で数学の教員免許を取るためにやっているのですが,もう一度線形代数とベクトル解析をマセマシリーズでちゃんとやることにしました。同じことを感じている方には,おすすめの本です(マセマではなく)。