天文分野で、ケプラーの法則を説明しますが、恒星の物理で再び連星の質量を求める問題があります。このときのケプラーの第3法則との関係は、連星どうしの重心からの回転運動に置き換えてやれば、太陽の質量をもとにした式になることを説明します。

ケプラーの第3法則は 万有引力の式 \begin{equation}F = G \frac{Mm}{r^2}\\
\end{equation}
と遠心力の大きさ\begin{equation}
F = m\frac{v^2}{r}\\
\end{equation}(1)と(2)が等しいことを使って
            公転速度の
\begin{equation} v = \frac{2\pi r}{T}\end{equation}
(3)の両辺を2乗した
\begin{equation} v^2 = \frac{4\pi^2 r^2}{T^2}\end{equation}
(4)を(2)に代入して
\begin{equation} G\frac{Mm}{r^2}=m\frac{\frac{4\pi^2 r^2}{T^2}}{r}\end{equation}
(5)を整理して \begin{align*} \frac{r^3}{T^2}=\frac{GM}{4\pi^2} \cdots (const) \end{align*}
のように示すことができます。

連星や衛星の質量は,2天体間の距離 $r$, 天体の質量 $M$ と $m$,および共通重心からのそれぞれの公転半径を,$a$, $b$ として,
\begin{equation} r = a + b \hspace{2pc} Ma = mb \end{equation}(6)から
\begin{equation}  b = \frac{rM}{M+m}  \end{equation}
天体 $m$ の遠心力は \begin{equation} F = \frac{mv^2}{b} \end{equation}
公転周期 $T$ から $v$ は\begin{equation}  T = \frac{2\pi b}{v} \longrightarrow\: \hspace{1pc} v =\frac{2\pi b}{T} \end{equation}
$v^2$ は,\begin{equation} v^2 = \frac{4\pi^2b^2}{T^2}\end{equation}
(10)を(8)に代入して遠心力とし,
半径 $r$ ではたらく万有引力\begin{equation}  F = \frac{GMm}{r^2}\end{equation}
と等しいとして,(7)を代入して$b$を消去すれば,\begin{equation}\frac{r^3}{T^2} = \frac{G}{4\pi^2}(M+m) \end{equation}
が導き出されます。

地球と太陽の場合にも,地球の質量を $m$,太陽の質量を $M$ として(12)式が成り立ちますが,$m$ は$M$ に比べて非常に小さいので無視して

\begin{align*}\frac{r^3}{T^2}=\frac{G}{4\pi^2}M\end{align*}
と示せます。太陽系ではこのとき,距離を天文単位,周期を年とすれば,地球の場合 $\frac{r^3}{T^2}=1$ になるので
\begin{align*}\frac{G}{4\pi^2}=\frac{1}{M} \end{align*}であることになります。

$M$ は太陽の質量で,これを質量単位として$1$にすれば,$\frac{G}{4\pi^2}=1$ となるので,

恒星(連星)の質量は $\frac{r^3}{T^2}=\frac{G}{4\pi^2}(M+m)$ に $ \frac{G}{4\pi^2}=1$ を代入して

\begin{align*} \textcolor{red}{\frac{r^3}{T^2}=(M+m)}\end{align*}という式で求めることができます。
ただし,周期の単位は年,距離は天文単位で,質量は太陽を1とした値になります。

 さてこの公式をどのように連星の運動に当てはめるかですが,観測データから公転周期は分かったとします。連星どうしの距離ですが,これには次のような関係で求めることができます。連星までの距離は年周視差から求められますが,面倒な計算をしなくても,公転距離は地球からの見かけの角距離と下図のような関係になっていますので,年周視差と角距離の比が,そのまま地球太陽間の距離(1天文単位A.U.)と恒星A,B間の距離の比になっているのです。

具体的な例では,地球に最も近いケンタウルス座α星のA,Bが公転周期が80年(ピッタリ),年周視差0.74秒,角距離17.7秒でちょうど距離が24天文単位であったり,シリウスのA,Bは公転周期50年,年収視差0.375秒で角距離が7.5秒でぴったり20天文単位であったりして,なぜか計算問題に都合の良い値であったりしていて,明るさと距離なども含めて毎年試験問題にしたりしています。