地質調査所の高橋雅紀さんの地質教材をもとに授業で行った実習を紹介します。

高橋雅紀さんお手製の,地質構造と地形を理解するための地質ジオラマ


この実習のやり方は,’17年の3月に行われたGSJ シンポジウム「ようこそジオ・ワールドへ」で高橋さんからじきじき教わっています。教材は,すべて高橋さんのホームページからダウンロードすることができます。→こちら(地学教材>発泡スチロール模型の教材)

高橋さん自身も,地質図の理解がいかに難しいものであるか,研究者でも地質が専門でなければ敬遠すると述べていますが,以前は大学入試センター試験の「地学Ⅰ」で必ず出題されていて,受験生を大いに困惑させていたものです(現在の「地学基礎」では範囲外になっていますが)。

実際,教科書にある図や写真は2次元でしかないので,どうやって理解させるかには相応の工夫が必要になるはずなのです。なかでも,地図上に描かれる地質の境界線,これを露頭線と言いますが,の書き方は難問中の難問と言えます。

そこで,高橋さんは,この露頭線を3D模型でまず描かせてみるという試みをされています。材料は,10cm角の発泡スチロールの立方体(1個数十円)。これを電熱式のスチロールカッターで切断して,尾根と谷の地形模型にし(2つで節約),傾いた地層境界線(露頭線)を描かせてみる,というものです。最終的に露頭線は地図(地質図)の平面上に描き込む方法をマスターしなければなりませんが,この立体で試すことで,より主体的・能動的な理解につながると思いました。

まず,地層面の走向と傾斜から説明します。クリノメーターという器具の説明もしますが,地層面を定義するのに,水平面との交線を走向と言うことが分かれば,まず第一のハードルをクリアーしたことになります(20分ほど)。

スチロール模型は,南に傾斜しているなだらかな尾根と谷の地形で,立方体側面には東西方向の走向で北側に(地形とは逆方向に)約20°傾いている平らな地層の境界線(赤と青)が,あらかじめ描かれています。このつづきが地表にどう表れるか2人で相談しながら描いてもらいます(約10分)。行錯誤をつづけるうちに,(初めはそもそも何をやっているのか理解できない生徒もいますが)こうでなければならないという解に近づいていくところが,面白かったです。

試行錯誤の跡

ブロックの立体的な様子が分かるようにCGにしてみました。

最後は,実際の露頭線の書き方を,作図で行います。ここでは,とにかく手順通りにやってみて,あとから理屈が分かるのでも良いと思います。高橋さんの教材は,地層の傾きによる等高度の平行線が透けて見えるようにトレーシングペーパーを使ってスムースに作業ができるようにしてあり,とてもお薦めです。この図(褶曲している場合)を仕上げるまでで,だいたい授業2コマ分の実習になりました。

作図の方法にも,トレーシングペーパーをつかう工夫があります。

上の教材も,高橋さんのホームページで公開されています。